輪島の朝市通りの中央に位置する「天甚権兵衛商店」。
天甚権兵衛商店は創業文化12年(1815年)に輪島塗漆器製造販売業を創始した伝統ある塗師屋の漆器店です。
明治43年(1910年)に河井町大火災に類焼したが、すぐに再建し大正元年(1912年)には当地初の「特産漆器陳列輪嶋勸工場」として小売店を開店しました。正面から店内を見るとわかりづらいですが、実はこの店舗内には素晴らしい古資料館があります。
蔵の中の「天甚家古資料館 塗師蔵」
店舗奥の蔵にある塗師蔵。この場所はかつて作業蔵として作られました。能登沖大地震で一部損傷しました。このときに店主は、この場所を残すか残さないかかなり悩んだそうです。ですが、輪島塗の塗師としての伝統を後世にも残していきたいという気持ちから修復することを決め、現在は昔ながらの姿を残している大変貴重な場所となっています。
この塗師蔵の中には、創業当時から使われていた作業道具や江戸時代末期から明治、大正、昭和、平成、そして現在に至るまで、行商に使われた珍しい道具や実際に見本に使われた品も多数展示されています。
どの道具も実際に利用していた本物の作業道具です。この店の店主も実際に使用していた道具なので、どのように使っていたのか、どのような役割をするのかなんでも気軽に教えてくださいます。
そして中を見学していると不思議なことに気がつきます。それは、すべて展示されている漆器たちが1個ずつしかなく、セットになっていないことです。夫婦椀などはありません。
これにはワケがあります。実はここに置いてある漆器はお客様のところにもっていく見本なのです。いわゆる今でいう「商品サンプル」といわれるもの。昔は、これらのサンプルを漆塗りの職人さんが見本としてこれらを持って周り、その見本を見ながらお客様の要望される漆器を形にしていくというように使われていました。その為、この場所に展示してある漆器はすべてが1個ずつすべて違った漆器となっています。
塗師蔵を見学してから、今一度漆器を見てみると漆器に対して見る目も変わっていくかもしれませんね。ぜひ貴重な古資料館である塗師蔵を見学してみてください。
天甚権兵衛商店 内 天甚家古資料館 塗師蔵(ぬしぐら) | |
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住所 | 石川県輪島市河井町1-172 |
電話番号 | 0768-22-0066 |
見学時間 | 8:00~12:00(午前中のみ営業) |
入館料 | 無料 ※店内にて受付要 |
定休日 | 第2・4水曜日 |